2018年3月より、群馬大学には循環器外科に教授職が新設され、阿部知伸が着任し新体制となりました。長く地域医療の一端を担って来た伝統を継承しつつ、私どもは3つの目標を追求してゆきます。
わたくしどもはあくまでよりよい手術治療成績を追求して行きます。
手術治療成績には短期成績と長期成績があります。短期成績は心臓血管外科においては手術死亡率、合併症率などが指標となります。常に改善の努力を怠らず、必ず日本、世界の標準成績以上であることを目指します。
長期成績とは手術のあと、発作や入院、息切れなどがなくのびのびと長生きして頂くということです。現在心臓血管の手術は進歩してほとんどの患者さんが2週間以内の入院で帰宅されます。それでも手術を選択して頂く限りは、その見返りとして他の治療法では得られない長い健康な人生があるべきです。わたくしどもは常に患者さんの年齢、生活、社会的状況を考え、ご本人ご家族のご希望もよく伺い、最善と思われる手術治療を高い完成度で完遂することを目指します。
2018年は125例、2019年は179例, 2020年は236例の手術を行いました。全国平均と比べ良好な手術成績を収めております。
現在医療は進歩し、複数の治療法がある場合が増えてきました。たいてい科学的に考えて個々の場合でこの治療法が健康で長生きできる確率が最も高い、という選択肢があります。医学的な考え方は理解が難しいことも多いのですが、私たちはできるだけ分かりやすく、なぜその方法が最善と考えられるのか説明します。最終的には患者さんがご自で決定するのはもちろんです。
また医学的に、未だどちらが優れているか不明、あるいはほとんど差がない、という複数の治療法がある場合もあります。このような場合は、患者さん、ご家族の価値観に基づいて、自ら決めて頂くようにしています。
後進の育成は大学病院の最も重要な使命のひとつです。もちろん患者さんの安全が最優先で、むしろ患者さん第一の態度をこそ後進に伝えなければならないとも信じています。患者さんの安全を担保し、ご不快がないのを確認の上で、次世代の心臓血管外科を担う人材を育てて行きます。
医学の進歩のため研究を行うこともまた大学病院の使命です。もちろん患者さんへの説明と同意なしに標準的でないことが行われる、ということは全くあり得ませんのでご安心下さい。心の負担なく同意頂けるときは、医学の進歩のため臨床研究にご参加下さい。
先進医療の導入。群馬大学循環器外科はいくつかの分野で世界最先端の治療法にとりくんで参ります。
それでは以下に、心臓血管手術について患者さんからよく聞かれる質問と答えを書きます。最後に医療費についても簡単に記します。
機械弁 | 生体弁 | |
---|---|---|
長所 | 耐久性にすぐれる | ワーファリンがいらない |
短所 | ワーファリンという血を固まりにくくする薬が必要。 | 耐久性に限界がある。 |
機械弁 | 生体弁 | |
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長所 | 耐久性にすぐれる | ワーファリンがいらない |
短所 | ワーファリンという血を固まりにくくする薬が必要。 | 耐久性に限界がある。 |
大動脈とは、心臓から出て頭部、両上肢への枝を出して胸部を下行、腹部の枝を出して両足の動脈へと別れる一番大きな動脈です。平均的なサイズの1.5倍以上に直径が拡大したものを動脈瘤といいます。上行、弓部、胸部下行にできた大動脈瘤が、胸部大動脈瘤です。横隔膜のすぐ下の、胃や腸、肝臓、腎臓への枝が出る部分の動脈瘤は、胸腹部大動脈瘤と呼びます。腎動脈分岐部より足側の動脈瘤は腎動脈下腹部大動脈瘤です。
群馬大学心臓血管外科で行っている手術は、ほとんど全て各種健康保険(国民健康保険、健康保険組合、協会けんぽ、後期高齢者医療など)の適応です。医療費が高額になった場合は高額療養費制度が適用されます。
高額療養費制度では、患者様が請求された医療費を病院窓口で支払い、一定金額以上の支払われた金額は国民健康保険の場合は市町村役場に、社会保険の場合には加入していらっしゃる保険組合にお届けになりますと、定められた金額(所得で異なります)以上の支払額が支給されます。
費用に関する問題は、患者支援センターにお気軽にご相談いただきたいと思います。
参考までに、2018年現在の70歳未満の自己負担限度額を下に示します。
所得区分 | 限度額 | 限度額 (4回目以降)※8 |
|
---|---|---|---|
ア | 基礎控除後の総所得金額等が901万円超※1 | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
イ | 基礎控除後の総所得金額等が600万円超901万円以下※1 | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
ウ | 基礎控除後の総所得金額等が210万円超600万円以下※1 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
エ | 基礎控除後の総所得金額等が210万円以下※1 | 57,600円 | 44,400円 |
オ | 住民税非課税世帯※2 | 35,400円 | 24,600円 |
群馬大学循環器外科は長く地域医療の一端を担い、同門の人材を関連病院に輩出し貢献してまいりましたが、専任教授不在の診療科でした。
このたび教授職を新たに設けて充実の方向に大きく舵が切られ、2018年3月に新体制となりました。
今後は北関東の国立大学病院の使命を果たすために、成人心臓・大動脈を中心に、末梢血管、成人先天性心疾患もカバー、高度化・多様化する循環器の外科的治療に対応し、地域に有用な人材を輩出できるよう、安全に最大限の配慮をしながら拡充を目指して参りたいと思います。
地域医療の担い手として、近隣医療機関の先生方のニーズに応えて行くのはもちろん私どもの第一の務めです。大学の救急部はすでに地域の三次救急医療でかけがえのない役割を担っています。循環器外科も、現在緊急手術要請の8割程度は受けられているのではないかと思いますが、可能な限り応需し、4月以降の増員に伴いさらに救急対応も改善してまいりたいと考えております。
弁膜症・虚血性心疾患・大動脈疾患いずれも対応できない病態はほとんどありません。
弁膜症について阿部は弁膜症の外科において世界で最も重要な施設のひとつであるToronto General Hospital で3年間の正規のクリニカルフェローシッププログラムを終え、僧帽弁形成術・大動脈基部手術の世界の権威、Tirone David 教授をメンターとして手術指導を受けています。David 教授は幾人かの日本人を育てられていますが、東日本で先生自らメンターとして手術を指導された心臓外科医は群馬大学と静岡県に一人しかいないと思われます。
大動脈ステントを中心に血管内治療も立石助教を中心に良好な成績で困難な症例にも行っております。
自分の置かれているあらゆる条件を勘案して患者さん第一の診療を行うことは、David 教授が厳しく教えられたことです。現在チーム医療が広く提唱されておりますが、群馬大学病院にはやはり国立大学病院ならではの充実したヒューマンリソースがあります。わたくしども群馬大学循環器外科は、関連職種も含めた病院の総合力をよく把握し、かつ関連部門の意見もよく聞き、安全・確実に、現在のevidence で最良の予後をもたらすと思われる術式を、患者さんによく納得頂いた上で完遂してまいりたいと思います。
2018年は125例、2019年は179例, 2020年は236例の手術を行いました。全国平均と比べ良好な手術成績を収めております。緊急手術も可能な限り引き受けさせて頂いております。
連絡は以下の、群馬大学循環器外科当番医直通電話がございます。
平日日勤帯でしたら以下の総合外科学教室の電話、時間外でしたら群馬大学救急外来経由でもご連絡受けられます。
群馬大学総合外科学教室循環器外科当番医携帯電話(24時間直通)
電話番号:080−2389−9080
群馬大学総合外科学教室(平日8時30分より18時頃まで)
電話番号:027-220-8245(連絡をとりたい医師を呼び出すようにお伝えください。)
群馬大学循環器外科では広く人材を募集しております。
外科専門医未取得の研修医のみなさんで、群馬大学循環器外科とその関連病院、そして広く群馬県の病院で働きたい希望のあるかたは、いつでも連絡下さい。群馬大学総合外科の外科専門医プログラムでまずは外科専門医を目指すこととなりますが、心臓血管外科を専行したいと決めている希望者は、なるべくすみやかに心臓血管外科領域での修練で専門医がとれるよう調整致します。心臓血管外科のトレーニング自体はカリキュラム制で比較的自由にいろいろな施設で経験を積むことが可能です。海外にも広くつながりがありますので、留学希望がある人にはアドバイスができます。
心臓血管外科に興味がある学生さんはいつでも見学・実習に来てください。大歓迎です。
すでに心臓血管外科医として診療していらっしゃって、群馬県での診療従事を考えてもよいと思っていらっしゃる先生、随時ご連絡下さい。群馬県は心臓血管外科医が不足しています。それぞれの先生のご希望、状況に応じて考えさせて頂きたいと存じます。
今年は新型コロナウイルス感染症の流行で、後期研修の施設訪問、卒業後の進路の相談の方法などにとまどうことが多いのではないかと思います。群馬県・群馬大学で心臓血管外科の修練、診療を考えている方は、まずは気軽にメールで相談して下さい。群馬大学循環器外科はこの2年で手術数が約3倍となり、人材を求めています。皆さんとお会いできるのを楽しみにしております。
この3年間、毎年新規入局者を迎えています。
連絡先:gundai-junge(at)ml.gunma-u.ac.jp
※(at)は@に置き換えて下さい。
医会長 立石 渉、教授 阿部知伸
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