INTERVIEW

群馬県で専門医取得のすすめ!~専門医取得と妊娠・出産・育児のバランス~

"Our Medical Path: Specialization and Parenthood"

先輩医師に訊く!
専門医取得までのキャリアパス

インタビュイー:
群馬大学医学部附属病院小児科

御任 紫野 先生


群馬県で専門医取得のすすめ!「専門医取得・更新」と「妊娠、出産、育児」について、先輩医師たちの経験を紹介し、医師たちが群馬県での研修とキャリア形成を成功させるためのポイントを解説します。
インタビュアーの群馬大学麻酔集中治療科の熊倉みなみ先生がさまざまなゲストを迎え、複数回にわたって連載します!

2018年4月から、新専門医制度が導入されました。
仕組みが複雑であるため、学生や初期研修医の中にはどのような制度なのか分かりにくく、不安を感じている方々が多いのではないでしょうか。
初期研修中には、専門医を目指す科を決定するだけでなく、研修指定病院のカリキュラムに登録する必要があり、早い段階でシステムについて十分理解していることが必要です。
また、専門医資格取得までに、妊娠、出産、育児など人生の大きなイベントによって一時的に勤務継続できない期間や、働き方に制限を設ける場合も考えられます。
どのようなプロセスで専門医の資格を取得できるのか、また、群馬県内の研修指定病院のプログラムではどのようなサポートが受けられるのか、
という疑問に答え、実際に働く先輩医師のリアルな素顔に迫ります。

今回は群馬大学医学部附属病院小児科 御任 紫野 先生にインタビューさせていただきました!

初期研修医のタイミングでの出産ということで、産休・育休の期間はどのように決められ ましたか?

出産予定日の1ヶ月前から、産後5ヶ月間までの間を産休・育休としました。お休みの初めの3ヶ月間は初期研修医の期間で、その後は後期研修の期間でした。
小児科の後期研修は、合計半年間までならお休みを頂いても同級生と同時に専門医取得が出来るので、3ヶ月だけお休みをもらって3ヶ月は残しておくことにしました。生まれてくる我が子の入院や二人目の妊娠など、予期しないお休みに対応できるように残しておきたいなと思って。

HISTORY

◆初期研修医期間の妊娠出産で不安だったことや、改善してほしい点またよかったなと思える点、高崎総合医療センターで研修していてよかった点について教えてください。

妊娠出産で不安だったのは、育休手当が出ないことです。育休手当支給は同じ職場で2年以上働いていないと対象にはなりません。若手医師が数年ごとに病院を移動する診療科は多く、育休期間中無給の女医さんは少なくないと思います。育休手当の対象でない女医に対して金銭的サポートがあると、早期から出産を考えやすいかなと思います。

ハローワークへの申請で育児休業給付金がもらえたり、群馬大学病院勤務では産前、産後休暇中の手当がここ数年で出るようになりました。とはいえ、勤務先からの手当が出ないというのはローテータ期間中には不安なことですよね。

ただ、初期研修医期間の妊娠出産は、不安なことよりもよかった事の方が多いです。職場の同期研修医や上級医は大変理解があって、出産を祝福してくれました。高崎総合医療センターは初期研修医の人数が多く、私が当直に入れなくなっても穴埋めは比較的しやすか
ったのではないかなと思います。また高崎総合医療センターでは初期研修二年次はほとんどが診療科を選べるので、突然の欠席に対応しやすい科を選べば安心して研修を行えますし、●月から産休です!休みます!と言っても特定の科に欠席の挨拶がいらなかったりし
ます。また、実は私は不妊治療で息子を授かったので、不妊治療の通院も仕事の融通が効きやすい初期研修医のうちに行えたのは大成功でした。

私も子供のために欠勤が続いてしまって、こんなに迷惑をかけてどうしたらいいだろうと落ち込んでしまった時に、麻酔科の先輩医師に『その分の頑張りは今後同じように早退や欠勤してしまう人に返してあげて!』と教えていただき、初めて『そう考えればいいのかー!』と目から鱗で気が付くことができたので…成澤先生もそうでしたが、御任先生も前向きで素晴らしいお考えだと思います。

◆群馬大学小児科に入局を選択された理由は?

群馬大学小児科医局は多くの関連病院があり、多くの疾患症例を学べます。大学病院、市中病院、さらに大学院や留学等、働き方を選べるのも魅力です。現教授が「やりたい事をみんなそれぞれが叶えられる医局にしたい」とおっしゃっているのを見て、入局を決めました。

◆御任先生はご実家が遠方ということで、群馬での子育てなど不安はありませんでしたか?

比較的楽観的で、あまり出産や育児への不安はありませんでした。茨城の両親は毎日深夜まで働いているので、育児の面ではあまり頼りにしていませんでした。群馬には義実家もあり、夫はすでに群馬県内の医局に入局していたので、二人で協力して子育てしていこう!と群馬で生活を続けました。小児科の先輩方が、群馬は小児の医療費が無料だよ、医師会のファミサポ制度も便利だよ、と勧誘してくれたのも大きな一因です。ただ、実際に出産と育児を経験して、こんなに大変なものかと戦慄しました(笑)最近では母が茨城から週末は手伝いに来てくれたり、休みをとって息子の入院付き添いを交代してくれたり…頼りにしていなかったなんて偉そうなことを言っていたのが恥ずかしいほど、家族のサポートなしに育児は語れません。息子の乳児期、深夜の授乳やオムツ替えが辛いときには大学生の弟達に夜の面倒を頼んで睡眠時間を確保したこともありました。

◆群馬県で小児科で勤務するにあたって、小児科専門医取得はどの程度重要になってきますか?1年でも早く取得したほうが良いという資格ですか?ちなみに麻酔科では数年の差はあまり気にしておらず、群馬で医局に属している分には待遇の差などは専門医かどうかでは決まりません。

専門医取得の時期については、数年の差は気にされません。専門医制度開始前に小児科に入局された上級医の中には、取得せずに業務を継続されている先輩方もいます。ただ私の性格上、先延ばしにするとスイッチが切れてしまう気がして。また医局内では、何年時の入局者!として周知されているので、ヒヨッコとして丁寧に指導してもらえる年数のうちに専門医取得という一つの目安を達成できたらいいなという思いもあります。とはいえ、もし何か不測の事態が起きたら、専門医取得が遅れてしまうことは気にせず休むべき期間は休もうと思います。私は次の妊娠も不妊治療をしようと思うので、後期研修終了を目安にひと段落つけて、妊活しやすい環境の調整も考えています。

◆小児科医としてキャリアアップをしていく、仕事をしていく、専門医取得するなどについて現在困難と感じている点は?

産休育休をとったことでの同級生との差はさほど感じませんが、復帰後の差は大きく感じます。子供の迎えや夕飯、風呂、寝かしつけのために残業は出来ませんし、家でも勉強時間を確保できません。朝に勉強するぞ!と思っても、結局家事や保育園準備に追われて何もできず。他の後期研修医と比べると、経験や勉強時間に差が出ていることは痛感しています。
ただ、患者様の命に関わっている以上、帰ってはいけない状況や怠ってはいけない勉学は見逃さないようにしたいと思っています。 “必要な時は環境調整をして残業している”という自覚があれば、日々の定時上がりや息子の熱発時の早退の後ろめたさも大幅に軽減されます。家庭環境が残業を許さないときにはダラダラせずに帰りますが、丁寧な申し送りと帰宅の挨拶は必須です。

◆御任先生が考える将来設計とライフワークバランスについて

素敵なお母さん、自信を持って診療を行える小児科医、これはどちらも譲れない私の目標です。小児科医として私にしか出来ないこと、母親として私にしか出来ないこと、どちらも大切にしたいなと思います。少なくとも息子が幼いうちは、医師を辞めずに続けることが地道でもキャリアアップにつながると信じています。

◆最後に子育てをしながら小児科専門医のカリキュラムをこなす御任先生から、これから小児科医を目指す先生方へ伝えたいこと

私は専攻科として小児科を選んでよかったなあと毎日のように思えています。小児科医にとっては、子育ても大切な経験になります。患者家族への共感力がつくのはもちろん、ミルクやオムツの種類についてはなかなか教科書に載っていませんし、我が子の成長発達を教科書と比べながら印象付けるのはどんな座学より記憶に残ります。
医師は、子供の有無に関わらず、仕事に幸せを感じられる素晴らしい職業だと思います。子供の有無や性別に関わらず、どんな立場の人も快適に働ける職場を目指すことで、私の育児経験が還元できればいいなと思っています。

◆子供の命や健康と常に向き合っている小児科医だからこその子育てへの考え方や日常診療への活かしていくというところも大変興味深かったですし、周りの小児科医から得られるサポートや気遣いも一段暖かいというか充実しているように感じました。
御任先生が子育てが大変ということを感じながらも、忙しい臨床の合間に充実してお子さんと過ごされている様子が感じられましたし、そしてご実家が遠方であっても群馬県で子育てしながら小児科専門医を取得するということが可能なんだと前向きな気持ちになれるお話でした!ありがとうございました!

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